O House クライアントインタビュー Archive

クライアントインタビュー プロセス編⑥

                                         

O: O氏(施主)
K: 君塚(Kimizuka Architects)
 
現場での変更について
K: 
今回のプロセスでは、
通常であれば着工後に施工者が、
ゼロから設計者と打ち合わすようなことを
最小限に抑えられます。
これは、
戸建住宅のような工期の短いプロジェクトの場合は
かなり有効だと思います。
一方、入念に打ち合わされ、
非常にタイトなコストコントロールをしている分、
工事が始まってからの変更は、
なかなか面倒というのが難点です。
変更がないように、設計段階でかなり細かい部分まで
決めてしまわねばなりません。
だからあんな分厚い実施設計図書ができました。(笑)
今回はそういう意味で、
通常のプロジェクトと比較すると、
変更がほとんどなかったと思います。
逆にほんの些細な変更が、
ものすごい変更をしているかのように見えました。
ただ、それすらない状況と言うのが、
このプロセスでは、求められるのかもしれません。
 
O:
本当に、
ほんの少しの変更のために、
凄まじいやり取りが交わされましたね。
施主の立場からすれば、
コストにかける情熱を感じられますし、
施工会社について、設計者が、
深く理解していなければ成り立たないことですから、
本当に有難い限りでした。
 
K:
バブルの時代は、図面を出来るだけ引かないで、
現場で口で設計すればよいと言う風潮がありました。
クライアントも
現場で工事費の変更なしに変更することが
普通にできることだと思っていた時代です。
今は図面にないものをやってくれる業者は
あまりいません。
それだけシビアに見積りしているということです。
ですから、発注前の実施設計の密度を上げる為、
設計段階のクライアントとのコミュニケーションが、
より重要になってきているわけで、
それが我々のような設計事務所と家づくりをする、
メリットだと考えていただけたら光栄です。
 
O:
バブル崩壊世代ですから、
てっきり悪い時代に産まれたのだとばかり
思っておりましたが、
良いこともあるものですね(笑)
 
工事監理報告書について
K:
今回、出来るだけわかりやすい工事監理報告書を、
毎月提出させて頂きました。
公共工事などですと、
きちんとしたフォーマットに基づく工事記録写真が
施工者から提出されてきますが、
戸建住宅などの場合、
なかなかそこまで形式的な書類対応が難しいので、
私のところでは、
中間検査や完了検査などの法定検査書類に加え、
施工者から提出された写真や、
私自身が撮った写真などを使って
施工状況の報告を、
解説をつけて提出するようにしています。
専門家でないと難しい点もあったかもしれませんが、
だいたい、自分の家が、
見えないところも含めてどのようにつくられてきたか、
理解いただけたのではないでしょうか。
 
O:
工事監理報告書は、
設計図書以上に興味深く読ませて頂きました(笑)
着工の頃、
実家の父に「毎日現場に通え」と言われたにも関わらず、
仕事の都合もあって上棟までは明け方に数回、
竣工間際になって
ようやく毎週通うようになったくらいでした。
しかし工事監理報告書を頂いたおかげで、
既に隠れて見えなくなった部分についてまで、
どうなっているのか理解でき、
また建売の現場と違って、
とても手の込んだ作りになっていることを
知ることができました。
何より、
第三者的目線でチェックをして下さっているという点が、
安心感に繋がりましたね。
 
K:
今回は、施主対談にご協力いただき、有難うございました。
実際に家づくりを体験したクライアントからのメッセージは、
今後、家づくりを検討している方に非常に役に立つと思います。
 
 

クライアントインタビュー プロセス編⑤

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基本設計図書


O: O氏 (O House クライアント)

K: 君塚 (Kimizuka Architects)


K:

今回、限られた予算で、

最大限のパフォーマンスを得るために、

基本設計概算後、工務店を1社に絞り、特命を前提として、

実施設計やコスト調整を進めることを助言しました。

も ちろん、工事契約はあくまでも実施設計修了後で、

それまでは工務店は営業的な位置づけになるので、

施主、設計者、施工者間で信頼関係が成立しないと

なかなか難しいプロセスなのですが、

設計 ・施工一括方式ではないかたちで、

設計者と施工者の互いの良さを引き出していくと言う、

発注ルートの試みでした。


O:

私自身商売をしていることもあり、

相見積もりでコストを評価することに慣れていますから、

当初は特命を前提というのは有り得ないとまで考えていました。

その意図を汲んで基本概算段階では、

数社の施工会社に見積もり依頼をして下さいましたが、

各社間で随分金額に差が出てしまいました。

その中で、概算にも関わらず細かく見積もって下さり、

かつ予算にも合い、更に数多くの実績を持つ施工会社が、

元々教えて下さった施工会社でした。

巡り巡って落ち着いた感がありました。


K:

このプロセスを進めるうえで、

基本設計図書に出来るだけ細かい情報を表現する代わりに、

精度の高い概算がとれる施工者を選ぶ必要がありました。

また、実施設計段階の見積りでコスト調整が必要な場合、

設計意図を尊重した合理的なVE提案が期待できる

施工者であるかも重要でした。

そうでないと、たとえどんなに安い概算見積が提示されても、

施工者をこの段階で、

1社に絞り込むメリットはないからです。


施工者の得手不得手を無視した図 面は、

結局は無視されるか、とても高くなってしまうかのどちらかです。

今回のようなプロセスを踏むことは、

施工者が持っている技術的なポテンシャルを引出し、

タイトな予算で最大限のパフォーマンスを目指す場合、

有効な方法と言えます。

また、従来のような実施設計後に競争入札という、

蓋を開けるまで幾らぐらいになるか予想できないプロセスの採用は、

予算が厳しい場合はハイリスクに繋がるという意味でも、

今回の方法の方が、効果的と言えたでしょう。


O:

こ のやり方は、実施設計段階において、

設計者・施工者が密に意見交換をしながらVE案を

検討してくれるという期待ができますが、

工事発注前に施工会 社に負担をかけることになります。

その為に、特命発注を前提に、実施設計段階から

協力して頂くことが必要となったわけですね。

最 終的には、完成した家を見た誰もが想像するよりも、

だいぶリーズナブルなコストで完成したわけですが、

振り返れば、

基本概算後に工務店を1社に絞ったことが大 正解でした。

実施設計が終わってからの競争見積もりで、

予算超過していたらと考えるとぞっとします。

大変厳しいコスト面での制約があったのではと 思っておりますが、

違うプロセスを選択していたら成し得なかったと思っています。


K:

以 前私が働いていたイギリスでは、

このように、設計と施工を相対立するものとしてではなく、

独立した専門性が、

同じ目的に向かって協力し合うことによって、

より 合理的に、品質の高いものを、適正価格でつくろうという、

”パートナリング”という思想の重要性が、

しきりに言われていました。

 

このような話をすると、

日本とイギリスは違うからと拒絶反応する人もいますが、

実はこの考え方はトヨタ自動車の生産システムを参考に

考案された考え方と言われています。


ただ、この考え方は、ある種理想論的な観もあり、

システム化することはそう容易ではありません。

 

特に、設計・施工一括方式に適用すると、

一方的な元請の利益追求に、悪用される可能性もあります。

私は、設計・施 工分離方式に適用すれば、

その本来の理念に迫れると考えていて、

今回はその挑戦でもありました。


また、この方式は、施主、設計者、施工者の3者の

理解力や信頼関係のバランスと、その維持がとても大事なので、

誰とでも出来るというものではないとも考えています。

今回は、様々な諸条件を加味した上で、この方法が、

他の方法と比べて効果的に働いた例だと思います。


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クライアントインタビュー プロセス編④

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基本設計初期検討模型

O: O氏(O House クライアント)

K: 君塚(Kimizuka Architects)


K:

設計監理契約後の設計のプロセスへ話を移しましょう。


私は、クライアントの理解を得られないまま、一方的に、

作家としての実験を、プロジェ クトを通して行うことは、

個人住宅においては、好ましいと考えていません。

かといって、

ただ施主の言いなりになって図面を引くホスト役では、

プロとしては無責任だとも思っています。


提案する以上は、

自分自身も 良いと信じられるものを提案したい一方、

仕事としてのドライさも必要とされるわけですが、

じっくりとコミュ ニケーションを取り、

施主の持っている価値観やポテンシャルから、

独自のテーマを探り、提案を行なうことに努めています。


そ の結果、打ち合わせ量や、その成果でもある図面は、

通常のこの規模、予算のプロジェクトと比較すると、

かなりの量と密度になり ます。

今回もメールも含めると、相当なコミュニケーション量でした。

ただ、私としてはこの程度はやらないと、

建築家と家づくりをする意味はないと思っていて、

施主と我々建築家が、どこまで”ツーカーの仲”になれるか、

ということをいつも考えているんです。

今回、このようなプロセスを体験されてみていかがでしたか?

もっとドライでよかったとかありますか?(笑)


基本設計時検討スケッチ

O:

他の家を建てた経験がありませんので、

お打ち合わせやドキュメントの量が通常より多かった、

ということには気付きませんでした(笑)

確かにこの一年間を思い返せば、

ずいぶん密度の濃いお付き合いをさせて頂きました。

月に2回は自宅まで来て頂きましたし、

メールでは毎日のようにやり取りしていたような気もします。

お付き合い頂いた時間を考えれば、

設計監理料は安いくらいでしたね。(笑)

しかし同規模・同予算のプロジェクトをもう一度経験するとして、

もっと密度が低いやり方になってしまうとしたら、

今回のやり方に慣れてしまった以上、

きっと不安で仕方無いだろうとさえ思います。

今 回、どの情報を信じてよいかわからない断熱の話や、

コスト削減案の内容についてなども、

打ち合わせやメールで質問をさせて頂く機会が、

頻繁にありましたが、丁寧な説 明資料を用意下さるなど、

長時間かけてお付き合い頂けた点は、何より有難い限りでした。

またドキュメントや参考写真を、

メールで事前送付して下さった点 は、

些細なことではありますが、

仕事の合間など、

ちょっとした空き時間にチェックしておくことが出来、

メリットの大きいものでした。

改めて、

パートナーとして二人三脚で引っ張って下さったことに、

感謝したいと思います。

またお酒を飲みたいですね。

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クライアントインタビュー プロセス編③

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O House初期イメージ

O: O氏(O House クライアント)

K: 君塚(Kimizuka Architects)


K:

Oさんには、複数の建築設計事務所の中から

私の事務所を選んでいただきました。

私のところは、ラフプランと簡単なイメージで、

プレゼンテーションをさせて頂きました。

ラフプランというのは、

最終形を決める為にあるものではなく、

大きな方向性を吟味する為のものです。

やたらと細かい図面や模型を作るのではなく、

むしろクロッキーのようなエスキスを幾つか作り、

クライアントと議論するためのもの、

と考えています。

実際そのようなかたちのものとなりましたが、

私の事務所を選らばれた決め手はなんでしょう?


O:
今回の家づくりで最も注力し時間を費やしたのは、

私たちの思いや嗜好を実現して下さる建築家の方と

どうやって出会うかという点でした。

家づくりは、細分化していけば、

気の遠くなるようなプロセスの集合ですから、

細部に渡って一つ一つ私たちの希望を伝えていては、

際限がなく、そのうち妥協したり、投げ出してしまったり、

ということが起こるであろうと予想していたためです。

そこで、十数社から過去に手掛けられた物件や

ラフプランサービスがあること等を基に

絞り込んだ建築事務所さんとお会いして、

私たちの生活スタイルや思い描いている住宅像を伝え、

ラフプランのご提案をお願いすることとしました。

皆様それぞれに素晴らしいご提案をして下さり、

思い切って注文建築にして良かったと、

最初に実感できたのはこの頃です。

選定にあたっては、住みたい家を探すというよりも、

パートナーとなる人を選ぶのだ、

という気持ちの方が強かったです。

デザイナーとしての感性が、

私たちと同じ方向を向いていること、

そして今後の意思疎通に期待できること、

この2点が最も重要と考えていました。

同じ土地ですから、

私たちが希望の多くを語れば語るほど制約が生まれ、

似通ったプランが出てくる恐れがありました。

そこで、

細部には口を出さずにご提案をお願いしたのですが、

君塚さんのご提案は、

私たちの理想と正確に同じベクトルでした。

ご提案の後も長電話をさせて頂いて、

意思疎通が十分に取れることも確認でき、

無事決定に至りました。

施主の思いをいかに正確に受け止めることができるか、

そして施主の多くは、

私たちと同じく建築に関しては素人同然だと思いますが、

いかに素人の想像の域を超える質の高い提案ができるか。

建築家としてのポテンシャルを量る上で、

また人となりを知る上でも、

ラフプランづくりをお願いしたのは、

大正解だったと思っています。

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クライアントインタビュー プロセス編②

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O: O氏(O House クライアント)

K: 君塚(Kimizuka Architects)


K:

家づくりを建築設計事務所と進めようとする人は、

以前よりは増えてきたように思います。

それ でもやはり、

設計施工一括方式が市場の大半を占めていて、

我々建築設計事務所の役割を、

イマイチわかっていない人は多い と思います。

一方、Oさんは、相談を受けたときから、

この人はきちんと勉強してそうだという印象がありました。

Oさんはどうして建築設計事務所と家づくりを

しようと考えたのでしょうか?


O:

私たちの世代は、雑貨や家具に拘るムーブメントもあって、

快適な住環境づくりに興味があり、

また雑誌などで建築の美しさに触れる機会が

比較的多い世代なのではないかと思います。

私自身、所帯を持つ以前から、

いつか画一的な住宅ではない中で暮らしたい、

という思いがありました。

と は言え、子供が出来てからは

生活も慌ただしくなる一方で、

それまでの住居が明らかに手狭であり、

子供が就学年齢に達する前に引っ越しをしたい、

と思うように なってからは、

深く考えずに分譲マンションを探していました。

マンションは身近な存在でしたが、

注文建築などまだまだ手の届かないものだろうと、

検討もせ ずに諦めていました。

比較検討を繰り返すうち、

一戸建ても然程価格に差が無いことに気づき、

建売戸建住宅を見学に 行く日々となりましたが、

元々広い土地を分譲して建売にしているだけあって、

三棟続けて同じデザインであるなど

外観的な不満のほか、

間取り等の仕様を変更で きない不満や、

細部に注視したときの造りの粗さ、

注力したい備品のレベルの相違が目につくようになり、

どの物件も今一つ決め手に欠ける状態でした。

そ んな中で、ふと結婚当初に夫婦で読んでいた、

注文建築を扱う雑誌の最新号を手に取る機会があり、

注文建築の可能性にようやく思い至りました。

そこには、これ まで見てきた物件との

圧倒的な質の違いがありました。

即座に夫婦の意見は一致し、

ここまで来たら土地を購入して満足できる家を建てよう、

きっと予算面でも 折り合いはつくだろうと、

勢い半分、思いこみ半分で土地を探し始めました。

幸い有能な不動産屋さんとの出会いもあって、

あまり時間をかけずに納得の行く 物件が見つかり、

私たちの住宅づくりが始まりました。

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クライアントインタビュー プロセス編①

O HouseのクライアントであるOさんは、

とても勉強熱心な方で、

インターネットでの情報収集を通じて、

僕に相談をしてきてくれたのが始まりでした。

バブル崩壊後に社会人となったOさんは、

サラリーマン経験をすることなく、

自ら事業をはじめ生き抜いてきただけあり、

何でも自分で調べ、価値を見極め、

前に進もうとするタイプの人でした。

予算的な厳しさはなかったわけではありませんが、

そういうものの考え方、

自分なりのブレない価値観がある人であれば、

きっと策はあるだろうと、

直感的に感じるものがありました。

単純に言ってしまえば、

Oさんは、ゼロからの”家づくり”に、

向いているタイプだったのです。

そんなOさんに、

竣工後、インタビューを試みました。

家づくりを建築設計事務所とやりたい、

と考えている方に、

少しでも参考になればと思い、

Oさんの承諾を得て、

このブログで紹介することにしました。

施主の視点から見た家づくりの印象が、

垣間見られます。

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