#2 常識に捉われない

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住宅というのは、本来、建主の価値観次第では、最も制約が少なく、自由度の高い、
無限の可能性を秘めています。

しかしながら、新しい家での自分たちの住まい方を思い描く前に、
家とはこんなものだという固定観念があり、
その呪縛から逃れられないという人は少なくありません。
コスト的にも、技術的にも、やりようがあっても、
ちょっと他の家と違うプランや、
ちょっと普通よりも快適性の高い空間をつくることに、
なぜか尻ごみしてしまう。
そんな人は意外と多いのです。

常識に捉われないために必要なことは、何がやりたいのかという、
目的を明確にすることだと思います。
もちろん、常識というのは、昔からの習慣などから形成されてきたもので、
それはそれで、リスペクトすべきことですが、
その中には、形式として残ってはいるけれども、
現代人の生活には必ずしもそぐわないものもあるのです。

幾つかの事例を挙げながら考えて見ましょう。

① 玄関
メインの出入口として、通常独立した玄関スペースが設けられます。
扉は外開きで、中には外履きエリアが一皮あり、
内履きエリアは1段上がって始まるのが一般的とされていますが。。。。

例えば、
狭小住宅のような場合でスペースを有効に居住エリアとして使いたい場合など、
本当に独立した玄関スペースが必要かというのは、建主次第ともいえます。
また、扉については、敷地境界との位置関係によっては、
雨仕舞いをきちんとすることで、
欧米のように内開きとしたほうが良いケースもあります。
内開きとする場合は、内履きと外履きの段差については、
むしろないほうが邪魔にならなくて良いでしょう。
外履きエリアと内履きエリアの境界のわかりにくさについては、
床仕上げを変えるなどの工夫で対処出来るでしょう。

② 廊下
最近は徐々になくなってきていますが、玄関から入ると、
暗い廊下が寝室や居間まで伸びているというのが一般的とされてきましたが。。。。

部屋と部屋を結ぶ“廊下”は、部屋が壁で閉じていることによって、
奥の部屋にたどり着く為に必要となってきます。
しかし、狭いスペースをわざわざ壁で仕切り、廊下を設ける必要が本当にあるのか、
廊下を部屋の一部に取り込むことで、広がりのある共用部がつくれたりはしないか。
目的さえしっかりと見据えれば、
廊下はむしろ無駄なスペースと見えてくる場合もあります。

③ 寝室
4畳半、6畳、8畳といった単位で考えられ、
押入等が隣接しているのが一般的とされていますが。。。。

寝室の目的によって寝室の広さはもっと柔軟に考えることが出来ます。
例えば、生活の中心は共用部にあり、寝室は本当に寝る為だけでよければ、
ベッドか布団のスペースがあれば十分ということになります。
布団の場合は室内に押入れが必要ですが、
ベッドであれば、押入れは必要ないかもしれません。
衣類やリネン、その他の為のクローゼット等は必要でしょうが、
物理的な条件によっては、寝室の中にある必要はないかもしれません。
寝室を必要最小限に抑えることで、
共用部やエキストラの書斎などのスペースを確保できる可能性もあります。

④ リビング、ダイニング
リビング(団欒の間)とダイニング(食事の間)は別々のスペースとして設けられるのが
一般的とされていますが。。。。

リビングとダイニングはどうして別々のスペースでなくてはいけないのでしょうか。
狭小住宅のような場合は、リビングダイニングとして一体化してしまうほうが、
むしろ快適な生活が実現できる場合もあります。

⑤ キッチン
最近では、ダイニングと一体化したアイランドキッチンも一般的になってきましたが、
依然として、北側にあるべきだとか、
人には見られないように閉じた“台所“として計画すべきと考える人もいますが。。。。

冷蔵庫の無い時代ではないので、北側にある必要はないでしょうし、
台所が非衛生的な裏のスペースと考える発想や、
女性だけの場所と考える発想は、時代錯誤的とも言えます。
男も女もキッチンに立ち、家族と話しながら炊事をすることが一般的な現代においては、
キッチンを台所として独立させなければならないというのは、
必ずしも根拠があることではありません。
むしろ、小さな子供がいるような家では、
炊事をしながら子供を見ていられるようなスタイルの方が好ましいとさえ言えるでしょう。

⑥ バスルーム
トイレ、洗面、浴室は別々で、
浴室は、外で体を洗い、湯船につかるというのが一般的とされていますが。。。。

欧米では、トイレ、洗面、浴室は一つのスペースの中にあり、
体はバスタブの中で洗います。
最近では、シャワーブースとバスタブを設ける家もあります。
日本のように狭い家では、このようなスタイルを採用した方が、
間仕切りをなくすことで、広々として快適なバスルームがつくれるという考え方もあります。
トイレとバスルームを一体とすべきがどうかは賛否両論ありますが、
一日の疲れを癒す場所は、
本来リビングに匹敵するくらいに快適に作られるべきであって、
単に用を足すバックヤードとして考えるのは必ずしも合理的とは言えません。
また、洋風バスタブは、浅いですが、細長く、横になれるため、
老人介護などが近い将来必要となった場合においても使いやすいという考え方もあります。

⑦ 洗濯機置場
バスルームの洗面脱衣スペースに設けるのが一般的とされていますが。。。。

欧米では、キッチンカウンターの下や、ランドリー室など、
バスルーム内に洗濯機置場が無いケースの方がむしろ多くみられます。
そもそも、洗濯機がバスルーム内に無くても、
脱いだ服を籠に入れて洗濯機まで持っていけばよいだけの話で、
洗濯機を使う側の立場に立てば、
炊事をしながら洗濯機も回す人には、キッチンの近くにあったほうが便利ともいえますし、
外に洗濯物を干すことが多いのであれば、
バルコニーや庭に出やすい位置にあった方が良いという考え方もあります。

上で挙げた例は、機能に対するスペースの考え方についてですが、
そもそも、機能とスペースを一対一で考えなくてはならないという決まりもありません。
例えば、住まい手のライフスタイルによっては、
“寝室“として独立した部屋が必要のないという人もいるかもしれません。
家全体をいくつかの空間の連なりと捉え、
どの空間が何の為の空間かはその日の気分で決めたいと言うような人もいるかもしれません。

要するに、家づくりは、考え方次第で可能性は無限に広がり得るものなのです。
せっかく、一生に一度かもしれない機会、誰の為でもない、
自分たちの為の家づくりなのですから、
手にした自由を有効に活用すべきだと思います。

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