#4 住宅設計コンペとラフプランの違い

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僕たち建築設計事務所は、通常、正式な設計・監理契約を結ぶ前に、
案をなにがしかのかたちでプレゼンテーションすることが一般的です。

Kimizuka Architectsでは通常、
“ラフプラン”というかたちでこれを行なうようにしています。

ラフプランと、住宅設計コンペの違いはなんでしょう?

住宅設計コンペと言うのは、設計者を選ぶというよりも、
案を選ぶという意味合いが強いと思います。
また、たった1回のヒアリングから、
完成形に近い基本計画図やイメージを提出する場合も多いのが特徴です。

住宅設計コンペでは、建主は応募された中から気に入った案を“選ぶ”ことになります。

しかしながら、これだと、カタログから気に入ったモデルを選んでいるのと変わらず、
どうも、本来の家づくりの趣旨とはかけ離れているような気がしませんか?
“家をつくる”=“デザインを買う”と言うことで良いのでしょうか?

また、住宅設計コンペでの選考理由を、トイレがこっちについていたからとか、
リビングが大きく取れていたからとか、
間取りで判断しようとする建主をみることがありますが、
本来このような類のことは、
どの建築家に頼もうが、設計のプロセスの中で練り上げていけばよいことです。

ただ、どうしても住宅設計コンペの場合だと、提案する方もされる方も、
採用されたらその案でいくという前提があるかのような気持ちになってしまいがちです。

しかし、考えてみると、本来、建主が、この段階で必要なものは、
そのまま建つような案や、
額に入れて飾っておきたいような、きれいなCGや模型写真ではないはずです。

そこで、僕は、直接問い合わせてきてくれた建主に対して、
“ラフプランからはじめましょう”と、いつもアドバイスするのです。

ラフプランは、案そのものではなく、プロセスに比重を置いています。

建主は、ヒアリングの際に様々な要望を建築家に伝えます。
その中には、とりあえず言ってはみたものの、
はっきりと何がしたいのかわかっていないとか、
うまくまとめきれていないということもあるはずです。

また、要望の中には、つじつまがあっていないものや、
全てを満たすと、返って、求めていた住まいとはかけ離れたものになってしまう、
といったようなこともあるかもしれません。

しかし、それは、ある意味当然のことです。

言葉というのは、人と人とがコミュニケーションする上で重要なツールである一方、
人というのは常に自分のことを言葉によって説明できるかというと、そうではありません。
ましてや、
自分たちのライフスタイルや住まいについて、常に言葉によって考えているわけでもないのです。

そのような、未定まらぬ大きな方向性、
自覚していない本当に自分が求めている住まいのヴィジョンについて吟味し、
発見する為の材料として、ラフプランがあります。

僕の事務所では建主に対してヒアリングを行なった後、
具体的な敷地や法条件、予算などと照らし合わせながら、様々な可能性を吟味します。
しかし、それらは、1案にFIXするためのものではありません。
建主とのコミュニケーションの材料に過ぎないと考えています。
建主が、具体的なたたき台を目にすることで、
そこでまた、頭で考えていたこととのギャップや、
新しいなにかに気付いてもらうことを期待しています。

この段階で重要なことは、
建主は建築家とたくさんのことを議論し、自分の住まいについて考えることです。
そして、このプロセスを通じて得られた、大きな方向性、価値観、ヴィジョンは、
実際に設計を進める段階で必ず生きてきます。

設計が始まり、徐々に細かい部分についても決めていかなくてはならない過程において、
ブレない方向性を建主と建築家が共有しているかと言うのはとても重要なことです。

洋服はその日の気分で変えられますが、
家づくりというのは一つ一つのことを、積み上げていくプロセスです。
それぞれのステージで、後戻りが出来なくなることも出てきます。
何かを判断する時、迷った時に、立ち返る場所がないと、
収拾がつかなくなり、場当たり的に継ぎ接いだような、家になりかねません。

そのような意味合いで、僕の事務所では“ラフプラン”のプロセスを提供し、
家づくりのパートナーとして気に入って頂けたら、設計・監理契約を御願いしています。

家を”選ぶ”のではなくて、”つくる”ことを前提としているか。
これが、住宅設計コンペとラフプランの違いです。

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