#9  どうしてたくさんの詳細図面が必要か

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建売住宅や設計施工の家と比較すると、建築家の設計する家は、
実施設計の詳細図面が非常に多いのが一般的です。

実施設計の詳細図面は、施工図面とは異なりますが、
細部に渡って設計意図を表すもので、
これをもとに工務店が積算を行なったり、現場で施工図を検討したりします。

詳細図面で網羅される情報量というのは、
建主とどこまでコミュニケーションを密に行なったかを示す一つの指標ともなるものです。

極端な話をすれば、簡単な平、立、断面図と仕様書だけでも家は建つかもしれません。

しかし、その場合は、見積内容もラフにならざるを得ないでしょうし、
その図面で表現されている情報以外の部分については、
施工者がやりたいように行なうことができ、
仮にそれが建主の意に沿わなくても、文句は言えません。
そして、変更する為には、増額調整が必要となる可能性が高いです。

実際、建売住宅や設計施工方式の家の多くは、
このようなつくられ方で、設計に時間も手間も掛けずに建っていきます。
設計2ヶ月、施工4ヶ月、といった様にです。
設計2ヶ月では、プランを決めて確認申請して設計は終わり、
といった感じでしょう。

設計に手間をかけない理由は、設計施工方式における設計は、
工事を受注する為の営業にすぎないからで、
そこに時間を費やしても利益にはならないからです。

バブルの時代の頃は、設計施工方式でなくても、
建築家も仕事を多く抱えていた為、図面をほとんど描かなかったという話も聞きます。
シングルラインの図面を描いて、
後は現場で口で設計していたという話も聞いたことがあります。
また、描くと見積りで拾われてしまうから描かないんだ、
というような訳の判らないことを言っていた人もいました。 

しかし、これは、想像するに、
施工者が工事受注額の中に相当な粗利益を見込むことが出来たからで、
昨今のように、どこもギリギリのラインで受注に漕ぎ着けているような時代では、
図面に無いものを現場でやる為には、
それ相応の増額手続きが必要になると考えた方が良いでしょう。
図面をきちんと描いていても、
拾い落としたからといってやりたがらないような工務店もいるぐらいの時代なのです。

設計のプロセスで建主と共に積み上げてきた情報を、
詳細図面に可能な限り網羅すること。
これは、僕たち建築家が、実施設計の際に建主のためにできる、
必要最低減のことだと思っています。

これは同時に、
工務店にとっても、きちんと見積もってさえいれば、
バブル期のような現場での不条理な追加工事に怯えずに済み、
気持ちよく仕事ができるはず。。。と、信じたいです。

詳細図面をたくさん描くことは、
建築家が工務店に設計意図を細部まで伝えるというだけでなく、
このように、建主と工務店とのフェアな関係をつくる上でも重要なのです。

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