#11 建築設計事務所の監理とは?

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確認済証が下り、建主と工務店との間で工事請負契約が締結されると、
いよいよ、工事がはじまります。

工事中、僕達建築家は、建主から直接委託された、
建築士法上の工事監理者という立場から、家づくりに関わることになります。
これも、建築家との家づくりと、設計施工一括請負方式の家づくりとの異なる点です。
設計施工一括請負方式の場合は、形式上の工事監理者が、
施工者側で立てられることが一般的だからです。

それでは、この“監理”とはいったいどんなことをするのでしょうか。
これもまた、知られているようで知られていないことが多いかと思います。

工事段階における施工者の役割と、建築家の役割を整理してみましょう。

施工者の役割は、工事発注図書に示される設計意図に従い、
施工上の調整を検討した上で工事工程を組み、各種専門工事業者を手配、
品質管理し、契約に記される期日までに建物を竣工させることです。
これら一連の仕事を、“施工管理”といいます。

一方、建築家の“工事監理”というのは、
工務店の“施工管理”とは、字も意味も異なります。

細かい内容はここでは割愛しますが、
建築家の“工事監理“は、建主から直接委託された第三者の立場から、

①発注図書どおりに工事が行われているかを “確認”すること
②発注図書だけでは網羅しきれない設計意図を施工者に伝達すること

の二つの大きな軸によって成り立っています。

①の確認は、現場での要所確認や検査、書類や写真による報告の確認によって行われます。
公共建築など大きな建物では、現場常駐監理といって、
建築家が現場に常駐してこれらの業務に当たる場合もありますが、
戸建住宅などの小さなプロジェクトでは、
そこまでの予算が、設計監理料として準備されることはまずありませんので、
工程に応じて必要な時期に現場に赴くことになります。

毎日の工事は、工務店によって“施工管理“され、
現場チェックをはじめ元請業者としての自主管理が行なわれているわけですが、
工務店も人間ですから、常に完璧とは限りません。
第三者が現場に赴くことで、彼らが気付かなかった点や、
勘違いして職人に指示していた点などが発見される場合もあります。
建築家の場合、設計者でもあり、計画の内容も熟知しているので、
この”工事監理“が有効に機能するのです。

信頼できるきちんとした工務店に工事を発注していれば、
この現場確認は、工務店の悪意のある手抜き工事を阻止するというような、
ネガティブなものではなく、
間違えや勘違いを極力なくし、より良いものを共に作り上げていく為の、
ポジティブな位置づけとして考えることができるでしょう。

昨今の住宅建設に纏わる様々な問題により、
施工者性悪説が前提に考えられがちな風潮がありますが、
本来は、施工者性善説が成り立たなければ、
良い建物は建てられるものではありません。
建築家が第三者として確認するからといって、
一日中現場に張り付いて逐一業者の行動をチェックすることなどできないわけで、
要所を確認し、あとはそれに準じて行われていることを信じるしかないわけです。
この意味でも、工務店選びはとても重要であると言えます。

このようなプロセスを経て確認された内容は、報告書としてまとめられ、
建主に対してはもちろんのこと、
法定中間検査や完了検査の際に検査機関にも提示されます。

②の設計意図の伝達は、建築家との家づくりの場合、①以上に重要な業務です。
建築家はたくさんの図面を工事発注図書として準備するわけですが、
それらの図面は施工図や加工図とは異なります。
実際に施工を行っていく上で、それらの検討や調整が行なわれる際、
設計者である建築家がその細部の伝達を施工者に行なうのと行なわないのとでは、
最終的に出来上がる建物は全く違ったものに成ってしまう場合もあります。

監理と言うと、現場に行っていればよいと思われる建主も少なくありませんが、
この設計意図の伝達のための工事打ち合わせというのも、
建築家との家づくりの場合はとても比重が高いものです。

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