#12 竣工引渡し後から家は育ち始める

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家づくりは、家を買うこととは異なるという話を再三にわたってしてきたわけですが、
家というのはある意味で、永遠に完成するものではありません。
竣工引渡しによって、一応、コンピューターでいう初期設定が完了したとはいえますが、
その後、家がどのように使われ、維持されていくかは、建主にかかっています。

住みながら少しずつ手を加えたり、リフォームを行ったりと言った話だけでなく、
補修やメンテナンスも重要な要素です。
マンションなどでは管理組合や委託管理会社などがあって、
そこに修繕積立金が住民によってなされて建物の維持管理が行なわれていくわけですが、
戸建住宅の場合は、
建主自身が自ら長期的な予算計画を立てて行っていくことになります。 
定期的な点検や、補修やメンテナンスを怠れば、建物の寿命は短くなりますし、
こまめに行なえば長くなるでしょう。

通常、1年点検、2年点検などは、
施工した工務店側が自発的に行なってくれることも多いですが、
建主の側が、徐々に自主的になっていかないと、いつの間にか点検も滞るようになり、
問題が起きたときにはかなり深刻な状況になっていた、
などということもあるので注意が必要です。
早期発見早期治療は体だけでなく、建物にも言える事です。

点検時期の目安や点検項目については、
下記の住宅金融支援機構のサイトで紹介されている、
「マイホーム維持管理ガイドライン」や、「マイホーム点検・補修記録シート」
なども参考になると思います。

http://www.jhf.go.jp/customer/hensai/hosyu_kanri.html

僕がイギリスの建築事務所で働いていた時、
日本との大きな違いを感じたことの一つに、メンテナンスに対する意識があります。
イギリスでは、建物はメンテナンスをいかにするかが論点になるのですが、
日本では、いかにメンテナンスしなくて良いかが論点になる傾向があり、
極端だと、メンテナンスをしないためであれば、多少住み難かったり、
快適でなくても良いと考える人もいます。 
そもそも何の為の家かという目的に立ち返れば、
このような優先順位のあて方はおかしな話ではあります。

何世紀もの間、同じ建物をリノベーションして使い続けるヨーロッパの文化と、
スクラップ&ビルドで使い捨てれば良いとしてきた文化との違いがあるにせよ、
建物と言うのは、やはりメンテナンスありきで考えるのが健全と、僕は思います。
ましてや、限られた予算で、限られた仕様、性能で建てられた戸建住宅であれば、
なおさら、維持メンテナンスには注意を払うべきでしょう。

そういった、一見、面倒なことも含めて楽しめることが、家づくりの醍醐味であり、
家と建主との関係や、住環境の豊かさといった観点からも、
重要なのではないかと思います。